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 夢でふられた。ごめんなってたった一言と記念日に買ったお揃いのシルバーリングと、ベッドの脇に合い鍵を残して彼が去る夢。現実になるのもそう遠くないかもしれない、目を覚まして思った。着信履歴に蔵の名前があったのはもう先月のことで、メールは私が返していないまま。こうなった理由が忙しさだけじゃないことくらいわかってた。はぐれた視線と適当な相槌と、ちぐはぐな会話、返せないメール、繋がらない電話。
 蔵を嫌いになったわけじゃない。でも、好きでもなくなった。今夜行く。簡潔なメールに わかったと返信。ため息をついちゃいけない気がして押し殺す。ずるずる、だらしなく付き合って、都合が合えば体を重ねて、心が伴わない。これでいいんだろうか。私は、蔵は。
 出会えなかった精子たちがゴミ箱に捨てられるのをぼんやり見てると全てが無意味な気がした。



「なあ、」
「ん?」
「…何でもない」



 会えば言いかけてやめること、多くなったね。蔵の言いたいことは何となくわかる。私も同じこと思ってるから。でも言わない。私たちきっと満たされすぎて飽きちゃったんだ。もう一度好きになる努力もしない。別に嫌いじゃない。好きでもなくなってきた。間にあるのはたぶん情ってやつ。



「蔵、好き」



 嘘をついた心が渇いてる。不意に泣きたくなった。電話で言ってたらきっと泣いてた。愛してよ!と、必死で愛を乞う惨めな私を必死に隠した。



「俺も好き」



 目の奥に隠された愛してくれと叫ぶ蔵を無視した。ごめん。私も愛されたい。愛したくはないけど。


















120606

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